ローマ人の物語43
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2年ほどかかりましたが、ようやく43巻読了しました。長い道のりでしたが面白かった。 最後はローマ帝国が元首制から絶対君主制に変わっていき、それとともにローマ帝国が多神教からキリスト教のみが唯一の認められた宗教となっていくことが最後の6巻に描かれています。コンスタンティヌスが皇帝になり、それまでは断続的に迫害していたキリスト教を庇護するようになり、わずか70年後にはテオドシウスによりキリスト教が国教となり、それからわずか80年後には西ローマ帝国が消滅した。この本を読んでいると元来ローマ人が持っていた価値感、多神教であり、敗者と勝者の同化がキーワードにしているように思える。確かにカエサル、アウグストゥスから約300年近くもパクスロマーナが維持できたことは勝者と敗者の同化ということが大きな要因である。たとえばカエサルがガリア戦役でガリアの部族に勝利しても部族の自治は認め、補助兵としてローマ軍へ取り込み25年の勤めればローマの市民権がもらえ、ガリア系貴族で元老院議員にもなることができたというのはギリシアでは市民権がギリシヤ生まれのものだけしか得ることができなかったのとは対照的でもある。
同時に何故ローマが中世の始まりを告げる絶対君主体制を取らざるを得なかったのか、新たな蛮族とか外的要因が体制の変更するもとになったのではないかと思うが、私自身がローマ帝国史をもう少し勉強しなければはっきりとは言えない。三位一体のカトリックが不寛容に描かれ、異教徒あるいは背教者とも言われるユリアヌスが描かれている箇所が逆にイキイキとして描かれていて、著者が敗者と勝者の同化という元々ローマ的な価値観に対する評価が高いことを強く感じた。
それにしてもローマ人の物語を読んで驚くことは、カエサルやアウグストゥスの先見性である。最後にカエサルの名言で印象に残った言葉を2つほど挙げたい
「始めたときは、それがどれほど善意から発したことであったとしても、時が経てば、そうではなくなる。」
「人は現実のすべてが見えるわけではなく、多くの人は見たいと思う現実しか見ない。」
次は目の前あったカラマーゾフの兄弟を読み始めました。
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